oodahigashisoのブログ

島根県大田市内浄土真宗本願寺派の3つの組(そ)【大田、石東、三瓶】42のお寺が合併して、「大田東組」が誕生しました。

2023(令和5)年度 大田東組 僧侶・門信徒研修会(組講)

講師 宇治 和貴 先生(筑紫女学園大学人間科学部 心理・社会福祉専攻 准教授)
講題 「真宗における信と実践」~親鸞思想からのマイノリティ差別批判について~
日時 2024(令和6)年3月3日(日) 午前10時~ 午後1時~
会場 大田商工会議所2Fホール
主催 浄土真宗本願寺派 大田東組


 今年度の組講は「親鸞の信と実践」「真宗の歴史的研究」等の著書のある筑紫女学園大学の宇治和貴先生を講師にお招きして、親鸞思想からみてセクシュアル・マイノリティ差別をどうとらえ、LGBTQの当事者が現に苦しみを感じている状況において、私たち真宗門信徒や僧侶が何をなしていくべきかをひもといてくださいました。
 副組長 菅原 憲 様 導師にて 重誓偈の勤行


 進行は 仏教壮年会 会長 青木正三 様


 副組長 三瓶 暁 様による ご挨拶 並びに講師紹介


 当日は能登半島地震義援金の募金を実施


午前の部 講義Ⅰ

 今年の参加者は僧侶だけでなく門信徒の皆さんの参加が多く、門信徒の皆さんにも伝わりやすい講義となるよう心配りをしてくださった宇治和貴先生であった。


浄土真宗の位置づけは真宗学だけでは見えてこなかった
・仏教と社会との関係が明らかになる歴史学を学ぶことによって浄土真宗の位置づけが明らかにできる。
・私たちは、未だ来ていない未来だったときである現在にいつも存在し、その現在において歴史を今(現在)作り続けている。
・よりよき未来を作る存在は、現在(今)を生きている私たちである。
・釈尊の教説である仏法は僧伽(サンガ)が編纂した歴史的産物であり、生きる方向性を示している。
〈親鸞における信の構造〉

本願を自らの生き方の中心に据えようとするから、できない自分への反省として凡夫の自覚が成立する。
仏のように生きたいと願っていないのに、凡夫と名乗ることはできない
・凡夫と名乗るには、仏願に準じて生きようとする生き方がなくてはならない。
親鸞は仏道の実践を「自力」として否定していたわけではなかった
・親鸞は、自力のうちからは成立するはずのない「常行大悲」や「度衆生心」の実践を願うという経験。
・その経験の根拠を「他力回向の信」と理解していた。
人間の自己中心的な考えや行動をあらためて行くには、……
人間自身をよくみきわめる智慧
・その智慧にもとづいた、人を慈しむ心がなければならない。
仏教は仏(真理をさとった人)になることを教える(人格をつくりなおす)宗教
・つまり、自己中心のとらわれからはなれ、
・正しい智慧と慈悲の人格を作り上げることめざす


午後の部 講義Ⅱ

宗教の凋落
・世俗化の要因
     生殖・繁殖規範の急激な衰退(医療・経済の充実)
   宗教者・宗教関係者に対する嫌悪感情
   個人的選択規範の高まり、高収入者会
・伝統的価値観を強要する宗教に、個人として生きることに価値観を見出す世代が嫌悪感をを示す。
大多数者が「あたりまえ」と感ずることが、大変な暴力となり、少数者を傷つける


多数派がセクシュアル・マイノリティの当事者と向き合う中で生み出される問題
・LGBTQの当事者に起因するものではなく、社会の「常識」に起因した問題
・正座ができない人のために、本堂に椅子を用意するように、僧侶や寺院はあらゆる人が心安まり、穏やかな気持ちで参拝できるような工夫をすべきである。
生きづらさを抱えている人がそれを感じることなく、安らかな気持ちで過ごせる寺院はどんな人でも安心して参拝できる場所となるのだ。

統一教会の信者は熱心に選挙活動を手伝う。政治家や政党にとって好都合な存在。
・したがって選挙に行き、投票率を上げ、政治家にマイノリティに目を向けさせることも、全ての生きとし生けるものに幸いあれという願いの実現に向かう実践となりうる。
性に関する問題は低俗なものではない。全ての生物は性と無関係に存在することはできない
同性婚が認められず、連れ合いが命を絶ったその時財産も家族も全てを失う人がある
セクシュアル・マイノリティの当事者は自死率が高い
あたりまえだと思っている現状の中で克服すべき課題を発見するためには、タブー視されていた問題を直視することは、近道かもしれない。
親鸞が僧侶の結婚という問題をタブー視せずに取り組んだように、国際的で実践的な仏教・真宗教学を再構築したい。


 副組長 岩根 了達 様 による講師への謝礼と終わりの挨拶